24年度予算討論

24年度予算討論(23年3月議会)

自民党を代表して、平成24年度一般会計予算案に賛成の立場で討論をいたします。

 

今回の予算委員会の中では、ますます財政構造が厳しくなるなかで、「歳入をもっと増やせ」「支出を思い切って削れ」などの意見が多く見られました。民間企業並みに企業努力や営業努力で売る上げをのばしたり、ドラスティックに採算の取れない事業は簡単に切って捨てることができれば何の苦労もないのでしょう。一方、行政運営には、安定性、公平性、そしてわかっているけど不採算性が存在することも事実です。これからもこの状態は続きますが、双方の主張の意義や価値難を認めつつ、敵対視するばかりでなく、ともに難題を解決する協働姿勢が必要不可欠と思います。一方、税収の安定化を求めていくことも大切な施策ではないでしょうか。そこで、景気の動向に簡単に左右される法人2税(法人事業税・法人住民税)と地方消費税分を税源交換することも前向きに検討すべきではないでしょうか。もともと先進国の中でも高いと言われている日本の法人税ですから、法人所得税を一体化すれば将来的に引き下げを見直すことにもつながります。それがひいては企業の雇用拡大や研究部門への投資になり、経済活性化の手助けとなるはずです。そして、なんと言っても地方財政の安定化につながることは言うに及びません。市長会などでの前向きな検討を望みます。

また、国保などへの一般会計からの年々増え続ける繰り出し金に関しても、ここに当てはめさえすれば解決できるといった明快な方程式があるわけではありません。国の動向をにらみつつも、我々でできる範囲で医療費などの抑制にしっかり努めつつ、早期発見・早期治療のプロセスを確立して、「健康増進の街多摩」「メタボの最も少ない街多摩」、そんな街を現実のものとして目指してみてはいかがでしょうか。

 

さて、先にも述べましたが、今回の予算委員会では、ドラスティックなコストカット要望が随所で議論に取り上げられました。

しかし、真の経営改革とは、財政を縮小・削減することではない、ということが経営学のなかでもよく言われていることです。縮小や削減は、改革を進めるための入り口論のひとつでしかありません。無論重要なアイテムではありますが・・・。しかし、削減、カット、売り上げ向上などにばかりに目が行くと必ず失敗するといわれています。なぜなら、それははじめから答えありきだからであるからです。つまり、自己都合の範疇を越えないからです。

市民は何の為に税金を払うのかを考えるべきでしょう。つまり、真の改革とは入念に練り上げられた戦略にのっとり、「時代の変化やそれに伴う市民ニーズをどう的確にとらえるか」であります。先の読めない厳しい時代だからこそ、コストカットや縮小と言った削減ばかりの視点に終始すると必ず失敗することは、過去の歴史が物語っています。

 

さて、本市が執行する500を超える事業については、全く必要ないのではないか、というものは今のところ見当たりません。

しかし、一部の事業において、その運営方法についていささか疑問を感じるものもあります。加えて、努力によってもっと改善・改良できるはずのものが滞っていたり、あまりにも向上の兆しが弱くて、今後の運営が危惧されるものなどについていくつか申し述べます。今後の課題としてお受け取り下さい。

 

1つ目は災害対策であります。

4年以内7割の確率で東京に直下型の大震災が・・・、また昨今、新たに房総沖で活断層が見つかった、などの報道が連日のようにされています。その想定される被害は、被害総額112兆円、建物全壊、焼失が85万棟、死者が1万人を超えると言われています。

この災害対策は何にも増して重要課題として取り組むべきものではないでしょうか。しかし、来年度の予算を見ても、特別に目新たしいこともなく、広域で連携して課題に取り組むようなダイナミックな動きも見えず、残念ながら所管の答弁も、全体として緊張感が伝わってきませんでした。本当に17年前の阪神淡路、そして今回の東日本の経験や体験を生かした中で検証をしているとは到底思えません。

予算委員会の中で萩原議員が、「いざ、というとき私たちの命綱である飲み水はどうなっているのか?」の問に、あわてて「14万8千人の市民が一人一日3リットルで49日分確保できている」と言うという答弁がありましたが、質問されてから慌てて調べるのではなく、初めからしっかり把握しておいてほしいと思いますし、それが真実かどうか改めて確認してほしいものです。

また、上下水道の所管である東京都とも至急意見交換をし、いざその時には十分に状態を把握している地元の職員が、早急に対応できるよう、日頃から東京都との下ごしらえを進めてください。

また、災害協定についても同様です。すでに20年も30年も前に協定を結んだきりの状態も多く、先方は協定を結んだことさえ覚えていないことも考えられます。至急個々の団体と交渉をスタートさせ、最大でどこまでお手伝いを頂けるのか、最低でもどこまで期待できるのかなどを、ひとつひとつ棚卸をしていくことが急務です。

災害協定を紙切れ一枚のものにしないでください。

 

2つ目が指定管理者制度であります。

この3月の補正予算で可決したように「官民連携事業の推進に関する調査検討」のなかでも、指定管理者制度のありようも検討されるとのことのようですが、すでに進んでいる指定管理者との契約の在り方についても一考を促したいとおもいます。私がここでいう指定管理者とは、コミュニティセンターに代表されるような、地域住民による運営協議会などではなく、いわゆる民間の委任業者であります。つまり、結論から言えば、指定管理者制度が形骸化され、本来の目的を果たしていないのではないかという懸念を感じています。アウトソーシング政策をより積極的に推し進めて、新時代にあった新たな公共サービスのあり方を模索することは大いに結構ですが、そこには一定の競争原理も必要なのです。だからこそ民間の活力がそこに発揮されるわけだし、切磋琢磨が多くの難問を解決していくのではないでしょうか。実際に今までの大型の指定管理者のほとんどは、それまで市から仕事を委託されていた民間業者や外郭団体が横滑りでそのまま継続したものであります。1期目の3年間は仕方がないにしても、2期目の今日までも非公募により今でもそれらの組織が指定管理を受けている現状が、果たして民間の活力と言えるのでしょうか。まもなく3期目を迎えますが、やはり非公募で同じ組織に継続させるといった、お茶を濁す結果を残すのでしょうか。ならば説得できる理由が必要です。指定管理者の設置は議決事項です。議会にも収支決算書を公開して、厳しくその状況をチェックすることが必要と思われます。しかし、いまは指定管理者の目的のひとつである、「事業内容の是非」「経費のチェック」「市民満足度」等の確認はほとんどなされているとは思えません。適正化を早急にはかるべきと申し上げます。そうでなければ、指定管理者という隠れ蓑のなかで、税金の無駄遣いが行われる可能性があります。PPPの展開にも大いに期待しつつ、提案を申し上げます。

 

 

3つ目は人事評価制度であります。一向に制度の改正が進まない点に少々いらだちを感じています。公務員改革といえば、すぐに人員の削減・新規採用の一時停止、そして次にくるものは手当などのカット。そして最後は本俸の削減と、お決まりのコースですが、これらにはおのずと限界があり、本質的な改革とも言えません。

正しい公務員改革の入り口は、今日的な人事考課制度の確立をなくしては考えられません。どこまでやったかを測る「量」の評価ではなく、何をしたのかで測る「質」評価に切り替えること。それを庁内に制度としてしっかり定着させなければ、いつまでたっても使い切り予算からの脱皮はできません。すでに人事考課制度の改正については、本市においては素地ができているはずです。

そこで、大切なのは「人材育成型人事考課制度」の創設と言えます。

どの行政も時代を担う人材が育っていないというのが悩みです。

少数精鋭の組織であればさらに悩みは深刻です。年間にほんの数日間の研修で人材が育つとは到底思えません。人が育つのはあくまでも日頃の仕事を通してではないでしょうか。その制度の中心として新たな人事考課制度はどうしても必要なのです。職員の自立性・自発性を生かし、総合的に手助けをする、そういう仕組みが必要です。仕事の成果によって頑張ったものは報われて、そうでないものはモチベーションを低下させてしまうという外資系企業のような成果主義ではなく、「内発」および「自立」を理念とする新たな制度です。

今や民間企業では目新しくもない「目標管理制度」は、仕事の工夫や情報の共有化に加え、上司や周囲とのコミュニケーションも盛んになり、組織マネジメントが格段と向上します。その本人の努力とそこに至るまでの過程と、そして発揮された能力に対して、上司は一定の手助けと中期的なスパンでの評価を加えていくという、公務員人事制度改革への新たな挑戦が必要なのではないでしょうか。

どこにも誇れるような公務員改革を、新たな人事考課制度の開発から始めてほしいものです。

 

一方、民主党はいま、公務員組合に対して、協約締結権を与える法案を提出しようとしています。これは、公務員組合が、自分たちの給料を自分たちで決めることができる法律であり、公務員天国を創り上げようとするとんでもない法案であります。公務員の「お客さん」は国民であります。ですから、国民が選出した国会議員が作った法律によって公務員の給与を含めた待遇を決めるわけで、先進諸国のどこを見ても公務員が自分たちで給料を決める国などありません。この法案が間違って国会を通過することがあれば、民間企業と違って、親方日の丸でつぶれることのない状態を良いことに、交渉に歯止めがかからなくなるでしょう。公務員が職務を放棄してストライキなどを行えば大変なことになります。だから、自衛官や警察官には労働基準権そのものがないのです。結局、労働組合の言いなりであることがこれを見ても分かったわけで、まさに国家を滅ぼすどうしようもない政党と言えるでしょう。我々は地方から、先進的で市民にも納得してもらえるような真の公務員改革に乗り出すことが重要なのではないでしょうか。

 

今国会では消費増税のあり方を巡って、与党内で議論が行われてきました。しかし、結果は意見が分裂することは初めからわかっていたことではないでしょうか。前原政調会長が、能面のような無表情で一人冷静さを保ってはいましたが、かえって亀裂を深めたこの50時間というときを、無駄と言わずして何が無駄なのでしょうか。そんな時間があれば、最低保障年金に必要な財源はどうなっているのか、年金の一元化で我々が将来もらう年金がどう変わるのかなど、もっと真摯に国民に全体像を説明すべきだったのではないでしょうか。あたかもバラ色の未来ばかりが待ち受けているかのように思わせて選挙に勝った民主党。しかし、地域主権と言う時代においては、政治の果たすべき役割の大きなひとつは、国民に対して主権者としての責任と痛みを負う覚悟を、逃げずにキチンと説明できるかという点であります。耳障りの良いことばかり言って、肝心なことをごまかす姿勢は、無責任極まりないでしょう。

我々のような小さな自治体も、財政規模が縮小する中、多くのことを自己決定できる自由裁量が、ゆっくりですが与えられるようになってきました。しかし、それと引き換えに色々な事に自己責任を負わなければならない現実もあるのです。つまり、はっきり言えば、住民が伴う痛みに対して、いかにして理解を得られるかが重要なポイントになるでしょう。

 

さて、今回の予算委員会で、私を含む当会派の委員が質疑した「およそ20項目」にわたる質疑内容につきましては、議員自身の専門的見地からの質疑であり、また、それぞれの議員活動から得た市民の「なま」の声であります。ここで再び詳細についてくどくど申し上げることはいたしませんが、質疑中に明らかとなった問題点や課題について真摯に受け止めていただくとともに、提言やアイデアについても、どうかこれからの予算執行に大いに生かして頂くことを希望します。

 

最後に、市長がその任につかれて2年が過ぎようとしています。

この間、わが会派は本予算案も含めて、結果として多くの事案に賛成の意を示しきています。無論、時には判断に苦しむこともありましたが、全ては市民生活に支障がないようにとの大局的な判断をしてきた結果であります。つまり、賛成をしたから市長に協力的だとか、反対をしたから市長とは距離を置いているとか、少なくとも我々は、そんな単純で近視眼的な目線で物事を判断してきたことはただの一度もありません。我々自民党にとっての政治姿勢、つまり保守本流の政治とは、いわゆるイデオロギー論などで分別されるような軽いものではありません。それは、自分の生まれ育ったこの国に自信を持ち、先人が紡いできた長い歴史を大切にし、その時代に生きた人たちの視点で見つめ直そうとする姿勢であると考えています。

そして、あくまでも現実に対して虚心短観に目をむけ、現状に基づいて物事を考えていく。したがって、その範疇にあるものについては、我々は大いに合意するし、その範疇を越えれば当然反対の意を示すわけです。むろん、様々な人々の間には価値観の相違があって当然であり、その価値の相違に正面から向き合い、冷静に合意形成を目指すプロセスは大切にしなければならないと思っています。

我々は、常に問題意識を強くもちながら、広く公を肯定したうえでの改革を志向するものであります。

人を・家族を・そして、この国を愛するがゆえに守りたい。

そして、より良くしたいと言う思いから生じる情熱を第一に掲げ、政治の神髄を積極的に追求してまいります。

 

以上を持って、自民党の討論といたします。

 

“24年度予算討論” への1件のコメント

  1. 近藤 昇 より:

    本当に職務に健等見守っています。

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